聖書の一節
「目には目を、歯には歯を。」しかしわたしは言っておく。悪人に手向かってはならない。だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい。」(マタイ5章38節)
由来と応用
文字どおりの意味は、表面上は明らかである。ある人が罪を犯したなら、その罪と同じように罰せられなければならない、というのである。もしある人が、他の人の命を奪ったなら、その殺した本人は、自分の命を差し出さなければならない。この罰は、最初に、旧約聖書中の出エジプト記において伝えられた。主がモーセに言いあらわした戒律である。「もし、その他の損傷があるのならば、命には命、目には目、歯には歯、手には手、足には足、やけどにはやけど、生傷には生傷、打ち傷には打ち傷をもって償わねばならない。」
同じ言い回しが再び、新約聖書に現れる。が、焦点は別のところに置かれている。目には目で返す代わりに、イエスはわたしたちに、敵を愛するようもとめた。「あなたがたも聞いているとおり、『目には目を、歯には歯を』と命じられている。しかし、わたしは言っておく。悪人に手向かってはならない。だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい。」
この二つの教えの違いが、旧約聖書の時代から、新約聖書の時代への移り変わりを表している。新約の時代には、愛が律法や戒律に勝るのである。主は、旧約の時代の後に、人間と新しい契約を結んだ。旧約時代の預言者エレミアは書いている。この新しい時代に、主は、ご自分の律法を人びとの胸の中に授け、彼らの心にそれを記す、また彼らの悪を赦し、再び彼らの罪に心を留めることはない、と。(エレミヤ31:33-34)